表意システムでは、全ての記号を用います。中でも70の字母は、形がイメージを想い起こすように仕組まれています。字母が示す基礎イメージ(意味)は、他と組み合わせて「重ね文字」を構成する要素になるものです。
注: 単独で用いる場合に限って、別の「機能」を持つ字母もあります。基礎語の「重ね文字」には、重ねた全体の図形がイメージを象るのもあります。それらも、字母と同じように働きます。基礎語文字の例は、 ここと辞書の中で次第に増やします。このページでは、70の字母のイメージ についてのみ述べます。
形から受けるイメージには当然個人差があります。けれども、地球の重力・自然や人体の仕組み・現象・機能などは同じ地球環境の中では共通に認識されます。そんな要素を手掛かりに、字母の形とイメージができるだけ共通に無理なく 結び付くよう取り決めました。
また任意の要素としては、文章を左から右へ進めるので、右に向かう形には進もうとするイメージ、左に向かう形には元につながるイメージを関連させました。
ひとつの字母でも、見方によっては異なるイメージを持つ場合が少なくありません。線として捉えるか、面に塗り分けて感じ取るかで別の印象を受けます。複数のイメージを想起させる字母の場合には、重ねる相手の字母によって意味を区別します。
基礎語の重ね文字では、要素の字母のイメージとは無関係の場合もあります。統合的な形や、その手話表現が自然に意味を表すよう設定されている場合です。ですから以下に述べるのみが各字母が関係するイメージの「全て」ではありません。
各字母のイメージを頭に止めていただくと、文法や例題が楽しくご覧になれるとおもいます。
# 直角の折れ線は行き止まる角があるため、区切り・範囲をイメージさせますが、向きと大きさによって3つの抽象的なイメージに任意に結び付けました。
桝の上辺と右辺上の直角の折れ線、 何かを範囲付けて被せている形; (形のない)「事柄」
と対記号。桝の下辺と左辺上の直角の折れ線、区切って下を支えている形; (どこかに区切りのある)「場所」「所」
右辺と下辺から4分の1内側の正方形の2辺となる折れ線; 左から進んでくる文字の流れを行き止まらせるイメージ→「限り」
左上端から桝の中心へ、そして水平に左辺に達して、下辺中点に折り返すジグザグな折れ線。鋸の歯のように引っ掛かる形; 「摩擦」を暗示
/ 稲妻のような(天地)両極にかかわるイメージ
上下の端から4分の1ずつ内側の水平な長い平行線(伝統的な等式記号からの流用); 同じ
/ 等しい / 水平に重なる層や段のイメージ
の対記号で、90度回転して縦にした形、太さがあり、その中を何かが通るような形; 通じる状態 / 道 / 手段
左右の端から8分の1ずつ内側、丈の中央に位置する4分の1長さの(短い)垂直な平行線。両眼にも見え、比較する2点にも見える形; (現感覚と過去の体験を対比して)ものごとを「認識」するイメージ
の対記号で、90度回転して縦並びにした形、ドイツの割り算記号と類似形。(上下に)分かれた状態の記号; 分割 / (分かれた)部分のイメージ
# 上・下・左・右・前・後・内・外の8方向の表示にかかわる6つの字母は、手話記号を考慮して文字化したものです。肩前、親指で6方向を指す手話記号を用い、その方向暗示の象形 として2辺の長さの異なる短い折れ線を使います。(前後をイメージさせる字母は上下左右と区別するために別の形をとりました)
鋭角の突起で上を指す折れ線
; 上方向のイメージ
鋭角の突起で下を指す折れ線
; 下方向のイメージ
鋭角の突起で左側を指す折れ線(折れ線の上下の長さが違うのは、対字母
と左右対称でなくし見分けやすくするため); 手話では肩前、右手親指で自分側「内方向」を指す記号; 内方向 / 左 / 横関係で対立する二つの存在の一方
をイメージ。
鋭角の突起で右側を指す折れ線。手話では外方向を指す記号; 外
/ 他 / 外へ離れていく / 右および横関係で対立する二つの存在のもう一方のイメージ
*手話では、送り手と受け手側で左右の方向は間違いやすく区別が困難です。そこで、ふつうは指した方向が内か外かで区別します。
左側の上下端と右辺中点を結ぶ折れ線。文字の流れの進行方向に積極的に向かっている形; 何かの方に向かうまたは進むイメ
ージ
右辺の垂直線と左辺中点を結ぶ三角形(対字母
と完全な左右対称になるのを避けて折れ線を閉じている) 進行方向とは逆の元を指す形; 元 / 基 / 出発点
上辺の左右両端と下辺中点を結ぶ折れ線;
線的に捉えて→反射・屈折のイメージから「光」や「変化」にかかわる暗示。
下辺の左右両端と上辺中点を結ぶ折れ線。下でひろがった安定した形; 定まり、固まったイメージ、硬いイメージ
桝の縦横とも半分の長さで中央に位置する十文字。縦横の直線が交わる、数学記号からの流用; 加わる
/ 加算記号 / プラス(有利)に働くイメージ
桝に内接する円の直径の対角線による斜め十文字。数学記号からの流用。別の角度から重なる形→
複数が積み重なる、あるいは束になったイメージ / 積算記号
右肩の左上がり45度の平行な短い2斜線。端が重なっているように見える→何かがひとつではなく複数あるイメージ
/ 繰り返されるイメージ
桝枠いっぱいの正方形
; 面積にかかわるイメージ / 表面 / シート・平面的な物品
桝の4辺の中点を結んだ斜め正方形。閉じて完結しているが斜めになっているため石垣のように連続させて安定させよ
うとする心理が働く形; (物を構成する)「物質」
桝の2分の1の高さ、幅の、中心に位置する逆二等辺三角形。下向きの突起で指す形; 指示・表示
の上下対称形; 三角形にかかわるもの / (任意で)「形」
桝の左辺を直径とする右向きの大半円弧。輪が進行方向に出てこようとしている形; (回転しながら進み続けるイメージ)→ 時
/ (時に関わる認識要素の)音
大円の上半分のみ;
(私たちを大きく取り巻いている)自然 / 天
の対記号、上辺を直径とする下向きの大半円弧。自然に向かって両手をさし上げ向かっている形→(意志によって自然の逆・加工された状態にしている)人工・人為
中円の上半分の右下にその半分の直径の半円を続けた、右に巻き込む形; 螺旋
/ 巻いているイメージ / 絡み / 閉じこもるイメージ
の対記号で、180度回転させた、ほどけてひろがろうとする形;開放 / 繰りひろげられるイメージ / 快いイメージ
を横中心線で切って左右を入れ替えた形。左右から出合い触れ合う、あるいは2本の線が絡む形; 関係
桝の中心を通る左向きの大半円弧と右辺上の垂直線をつないだ、縦形の閉じた半円。元の方角をやわらかく指しながら進行方向に寄っている形; (ものの元と結果にかかわる)質
/ (形から)月
を右に90度回転させた、上に膨らむ閉じた大半円。触れられるような存在を感じさせる形; 物体 / 品物
上辺の中点に接する横中半円弧の両端から左右の辺まで水平に線が伸びている、
盛り上がった形; ふくらみ、盛り上がっているイメージ / (盛り上がらせる)「力」
と対記号で、上下対称形。窪んでいる形; くぼみ / (古来の煮炊きする場や道具の連想から)「熱」
上辺の左右両端と中央上から4分の1点を通る円弧の両端から、高さの半分まで垂直線を下ろしている形; (垂直線が何らかの限定を感じさせ)様子・状態
の対記号で、上下対称形、ある範囲を占めている感じの形→ 存在
右辺の中点に接する縦中半円弧の下端と左辺の中点を結んだ、掬おうと求める形→ 要求
の対記号で、上下対称形。進行方向へ向かって働きかける形→ 行為・行動
上辺の中点に接する中円の4分の3円弧の右回りの端が桝の中心にあり、そこから底辺ま
での半分の長さの垂直線が下りている。?(疑問符)の類似形; 分からない状態
の対記号で、180度回転した形;(「疑問」が倒されて)「可能」な状態 / 何かを掛け、つるすイメージ
下辺の中点に接する横中半円弧の両端と、横幅の中央で上から4分の1の点を結ぶ閉じた、しずくの形; 水・液体
を右に90度回転させ、そのまま頂点が右辺に達するまで水平移動した形。元を円で指し、先を突起で貫こうとしている形→ 貫いている状態
/ 真実
桝の左上4分の1正方形に内接する中円の、桝の中心に近い4分の1弧の上端から上辺に達するまで垂直線を伸ばしている。親指で前方を指す手話記号を抽象化した形;
前
を180度回転させ、親指で後方を指す手話文字を抽象化した形;後ろ
を左に90度回転させた、進行に逆らう形; 抑制 / ゆっくり / 弛緩
を右に90度回転させた、進行方向に強める形; 激しい / 速い / 衝撃 / 緊張
桝の左辺と右辺を直径とする大半円の下半分が接する頂点から4分の1丈の垂直線を上に伸ばしている。2つがもたれ合って互いに存在を支えている形、または2本脚で大地に立つ形; 人間(社会)・ヒト
の上下対称形。上に生い茂る形; 生える状態 / 木・草・花などの象形の部品 / 植物
下辺に接して中半円を横に連結し、左右両辺に届いた両端を桝の高さの中心まで垂直に立
ちあげてから上辺の中心と各直線で結んでいる有機的な形; 生きる状態 / 命 / 生き物(特に動物)にかかわるイメージ
の上下対称形。ハート形の流用; 感情 / 心 / (形から)花の部品
中円を半分に横割りにし弧の両端に桝丈の半分の長さの垂直線を挟んでつないだ、縦の長丸形を桝幅の中央に配している。数学記号の零の流用; 無
/ 空 / 長丸の形に関連するもの(ヒトなどの胴体部分など)
左辺の上下両端から4分の1幅内に達する円弧と、その右対称の円弧を下辺の水平線でつないだ形。挟まれた間に空間が開いている形;
(三次元的)空間 / 空 / (何かと何かの)間
「力」「熱」など、同じ仲間の概念をイメージさせる異字母があるのに、「言語」「わたし」「あなた」「光」「音」などの基本要素を直接イメージさせる字母がありません。不公平にお感じかもしれません。多くの基礎語のイメージは2字母からなる「重ね文字」で造ります。字母には、動詞、形容詞としても多様に活用展開できる要素を選びました。
補助記号もいくらかは形のイメージが機能に作用してはいますが、任意で取り決めたルールを表示するので、これらに関しては直接補助記号の項をお読みください。
各字母が単独で文字として意味する内容・機能、「重ね文字」中の使用例など、詳しくは未完ですが 辞書をご覧ください。