注) 既成の言語とは異なる文法のため、用語もまた既成の専門用語とは少し意味がずれる場合があります。
動詞・述語の組み立て ・ -動詞符とその対象標識 ・
-動詞符とその目的標識
動詞符は、後続の文字群を動詞または述語として働かせます。日本語では、「あなたは美しい」という場合、形容詞のみで述語が成り立ちますが、「試案」では、 「美しい状態+だ」という形にして述語を構成し、この状態が継続的にそうなのか、そうなるのか、そうだったのか、させるのか、そうではないのかなど述語の働きのキーとなる部分を動詞符とその「重ね文字」 で区別します。
述語を見分けやすいためには、動詞符はただ1つがいいかもしれません。が、異文化の利用者の間で、文中の誰が(何が)動作の主体なのかを明瞭にするためにgd
,ge
2種類の対の動詞符を準備しました。記号表でつけた番号の
gd, ge (grammatical symbols a-f の内)から、前者を伴う動詞をD動詞、後者を伴う動詞をE動詞
と呼ぶことにします。
いろんな述語・動詞の組みかたの例を上げてみましょう。
+(修飾語+)名詞文字
この組み合わせでは、「主語がそれまでの状態から転じて後続名詞文字の内容になる」という意味で述語を構成します。
主語以外の何かを働かすE動詞符や受け身形と組み合わせて、同一の表意文字を多様な表現に使用でき、しくみとして合理的に区別できるよう、基本形を定めます。
・ 字母だけのD動詞化の例:
なかには、主語がヒトでも、ヒトが持たない器官を象徴的に用いる場合もあります。また、器官ではなく「道具・もの」もまた、主語の耳目、手足や頭脳など器官の延長として、主語の これが作用・動き・機能する状態になるという意味で動詞化します。
* 脚や足の機能は立つ、踏むに限りませんが、これらの基礎文字の動詞化の場合にはこのように使おうと取り決めています。足や脚が別の働きをする内容には、それにふさわしい字母を組み重ねて表現します。
* 現代中国語の「脚」は、日本語で言う「足」のことです。中国では時代を経る間に意味が変化しました。「試案」のような象形文字なら、このような意味の変化は起こりにくいと思います。
威嚇する ←
(つの)が働く*
* 動物の角はふつう威嚇や闘いの道具です。ヒトは角を持ちませんが、「角」を表す重ね文字に「威嚇や武力」の象徴性を持たせ、ヒト社会の表現にも利用します。
器官は常に一定の機能しか働かないわけではありません。「基礎的な器官」を表す文字に「状態」を表す字母を重ねて、多様な動詞や述語を構成しま す。
# 私たちは走るとき、全身を使い、笑うときも顔だけが作用しているわけではありませんが、このように代表的な現象で捉えれば、象形文字を使って誰にも おぼえやすい表現ができます。またその象形文字の内容が誰に所属するのかも動詞符によって明瞭に区別でき、誤解を避けられます。
# 漢字の「走」は、中国の昔には「走る」の意味を持っていて日本では今もそうですが、現代中国語では「歩く」の意味に変化しています。(相原茂著『初めての中国語』)象形文字のわかりやすい取り決めでも、任意性が含まれている場合には変化するかもしれません。変化の可能性が高い利用の仕方の場合には後の管理に要注意です。
# 身体の部分を表す主な象形文字は、幼児が母語を学ぶのを助ける補助的なシンボルとして役立てながら普及します。それらの見分けに慣れた子供には、別の抽象字母を添加し、変化した「状態」を表す文字の理解も容易でしょう。それが定着すれば、さらにもう1字母というように加えて、言語を深めます。
(手…象形文字)は殊にさまざまな働きをします。手に関連する動作・行為の表現の例をあげてみましょう。
# 生物の外から見える器官だけでなく、内部の諸器官や血液・ホルモンなどの諸要素も同様に活用します。それらと「機能を果たす、働かない、バランスを壊す…」などの意
味の状態文字とを組んで、「主語に生物としての諸現象が起きる」動詞を構成します。また、
(心)と状態文字を組み合わせると、心の動きや感情描写の動詞になります。(#68参照)
# 主語が所有、または使用する機械や道具も主語の部分の延長として動詞の構成に参加します。「動詞のかなめとなる文字の状態をそれらが直接担う」意味の動詞を作ります。
に連続する文字の表す状態になるのは、
動詞のときとは違って、文中の
以下の目的語です。「
以下の目的語を、ある状態に(主語が)する(ならせる)」という意味で動詞ができます。内容によって、既成語の他動詞および使役動詞の場合が起きます*。
: (~に働かす、~を機能させる)→使う
: (動く状態にする)→動かす
: (多くする)→増やす
: ((他の人の)目を働かす)→見せる (この目は、主語の目ではありません)
: ((他の人の)耳を働かせる)→聞かせる (この耳も
以下の耳です)
* 伝統語では、{働く・使う}、{look, see, show}など、意味には関連性があっても言語の音声や文字では別もののように表される場合がよくあります。地球語・試案では むやみに記憶量を増やさないで合理的に表現力を高めようと図りました。このシステムがあるので将来地球語の情報は、文字をはっきり知らなくても基礎のイメージから検索できると考えます。