手話 ・ 地球語で「こんにちは」 ・ 非常用の視覚・触覚伝達 ・ 音声記号
原始以来の自然な伝達手段
ことばが全く通じない間で、どうすれば意志疎通がかなうでしょうか?
関係する品ものを見せる、絵を描く、身振り手振りを試みますね。
指差したり、動きや形を感情を込めて表現する手振りは、原始以来自然に
伝わりやすい手段で、実物や絵を描く道具もいりません。
ところがことばや文字の発達につれ、エネルギー消費が大きい身振り手振りは
あまり使われなくなりました。けれど現代人でも、伝えるのに夢中になると無意識に
手が動き出し、手振りがいかに永い間人類の伝達手段であり続けてきたかを感じさせられます。
手話の現状
現代社会では、手話は耳の不自由な人のためのものと思われがちです。
健常な人同士で言語的に使われる身振り・手振りは、野球や工事現場のサイン
などに限られています。
そのため耳の障害を持つ人々が手話を学んでも、隣人との交流さえできません。
また、手話が奉仕で支えられているので、彼らは社会の中で小さくなって生きています。
手話のルールが各国語に合わせて造られたため、手話での国際交流も無理。
一般人は話せるので手話に興味を持たず、いざ老化や事故で聞こえなくなって
愕然とするのが現状です。
未来の手話
原始以来よそびととの交流に活躍した手振り伝達にもう一度光を当ててはいかがでしょう。
もし共通に憶えやすい手話なら、一般人がことばの通じない相手との間で使うでしょう。
一般人が手話を使えば、耳の不自由な人々を閉ざしていた壁は一挙になくなります。
互いに自分の母語をしゃべりながら手話でメッセージを交換するなら、
お互いの文化の「違い」を同時に感じ、「違い」を尊重しながら交流でき、
伝統ことばを護ることも、合わせて育てることもできます。
* コロンブス時代の北米大陸には、千以上もの言語と民族が
海・山・森・平原・砂漠の地域を住みわけていました。
にもかかわらずフロンティアたちがどこへ旅しても同じ身振り語で
ビジネスが成立したと驚いて書き残しています。(William Tomkins 'Indian Sign Language')
手話は、侵略や摩擦を避け、異文化が永く平和的に「共存する」のを支えた
実績があるのです。
情報量の多い未来には、昔のままの手話では役立ちませんが、
地球語式の工夫をもってすれば、手話は、未来のグローバルな平和を支える
新しい伝達手段として再活躍できるのではないでしょうか。
一般字母の示し方には、それぞれ次の2種類があります。
1)手の「形」のサイン:
単独の字母を示す場合は、左右どちらかやりやすいほうの肩前で示すことが原則。
2)他の字母を象った手で行う「動き」、または「位置」のサイン:
この方法は「重ね文字」の場合に使います。
2~9の数字は1の方法のみ、補助括弧は手の形と動きの両方を伴う1種のみです。
1、2の動きの場合、ともにどちらの手を使ってもよいこととします。
重ね文字の示し方:
既成の手話は、ふつう1、2の方法を一体化してひとつのサインを示しますが、
重ね文字のしくみをもつ地球語では、片手で2字母を合成表示できるのが理想です。
そこで1、2の手段を分離し、1字母に2種類の表示方法を与えました。
ある字母を片手で象り、その手で他の字母の形を描くか、または指定の位置に
移動するかして、2字母の重ね文字を示します。
両手を使えば、4字母、位置記号をふくむときには5字母の「重ね文字」を一度に
示すことも可能です。ただし左右の手を同時に異なる向きに動かすのは難しいので、
両手の動きの時間差はよしとします。
慣れるまでは2字母ずつがやっとかもしれません。けれど長いスペルの英語や
字画の多い漢字も使ううちに一瞬に読めるようになるのと同じで、
慣れると、4字母の重ね文字もトータルな運動として操り、読めるようになるでしょう。
つなぎの補助サイン:
片手しか使えない場合や、初心者で滑らかに同時表示できない場合もあります。
そんなときは、gf (この左右の字母を重ねたこととする接着記号ハイフン)の手話を
重ね文字を構成する字母の間にはさみながら、次の手話記号との一体化を示します。
(親指を握った拳を指側を相手に向けて立てる):音声記号の「ナ」に相当
文中の区切り空白を示すサイン:
空白サインは音声記号の「オートゥ(トゥは無声音t)」と同じ働きをします。
正確さを要したり、将来コンピュータに手話入力する場合などで必要です。
どちらも各字母の手話と同様に、肩前で行います。
数や方向は、指の数や指さしなどのしぐさで共通に伝わりやすいですが、どの指を使うか
となると世界中でまちまちです。地球語数字では一般の表意の手話と識別しやすいよう、
0以外の数字は手の甲を相手側に向けて立てた指を数えます。
平面上では表現の難しい「前」「後」や「前進」「後退」に関連する内容の字母も、
三次元で捉える手話では、身体の前後に向ける形で自然に示すことができます。
「重ね文字」で表す「私」「あなた」などの代名詞にも、字母を組み合わせたしぐさ全体が
自分や相手を指す自然なゼスチュアーに近くなるよう、形・動き・位置の設定を配慮しました。
これらのための記号では、手話を先に考えて、それを想起しやすい形として後から字母を定めました。
・その他の手話の「形」は、字母(文字)の形または意味を連想させる形を手で象ります。
いくつか例をあげましょう:
「疑問」を表す字母:
(矢印線は「動き」の記号。字母の形との左右の違いは無視)
「水」を表す字母:
(滴るようすを象形)
(基礎重ね文字、落下):
(下:親指で下を指すサイン)の手を
を示して垂直に長くひき降ろす。
(基礎重ね文字、発射):
(上:親指で上を指すサイン)の手を
を示して垂直に長く引き上げる。
:滝{
(水)が
(落ちる)
(場)}:
一方の手でを示し、他方で
を象った手を
形に動かす。
手話ではふつう向き合う相手に伝えるので、送り手・受け手の立場によって左右が逆になります。
左右の向きを「文字」と同じに指定すると、受け手は混乱します。また左手と右手でも
同じしぐさが鏡文字になります。そこで、どちらの手で文字を象っても間違わずに伝わるよう、
内外の向きのみを観点としました。
*ただし、その場で対象や方向を直接指せるような場合には、
手話ではない別のジェスチュアをするほうが伝わりやすいでしょう。
臨機応変にいろんな仕草も織り込んで話を進めると楽しいでしょう。
・「動き」の代わりに「位置」で示す場合もあります。位置と「形」の組み合わせによっては、
手首が柔軟でなくて示しにくい人もあるかもしれません。
形・動きまたは位置をやりやすく、なるべく自然に伝わりやすい組み合わせで演じてください。
(体験の積み重ねが使い方を整理してくれるでしょう。)
(基礎重ね文字、あなた):
(前、親指で前方を指すサイン)を
(代名詞の構成要素、胸中央の位置記号)の位置で示します。「あなた」を指しているように見えるでしょ?
(基礎重ね文字、わたし):
(後ろ、親指で後方を指すサイン)を
(胸の前)で示します。自分を指してますね。
・ 進行方向にかかわる内容は、表記では文が右に進むので右向きの記号は進行方向、
左向きの記号は元方向を指しますが、手話では顔や体の向きに合わせるほうが自然です。
そこで、前後やそれらの手話は前後方向に向かうよう象ります。
・ 文法の試案は、最初から手話伝達を考慮して、
主語・述語・目的語などの語順を自由にしています。
このしくみによって地球語手話は、まず文字を憶える手段のひとつとして役立ち、
あとは使い慣らす訓練だけで利用できます。
・ 地球語手話の中には、伝統文化の中で現在使われているサインと一致するものも含まれます。
伝統の中でも方向性にかかわるサインは共通性の高いので心配ありませんが、
既存サインと共通しないものも多々あります。
仮に地域文化の中で「侮蔑」のサインと一致したとしても、意識的に捉えなおしてください。
世界中に侮蔑のサインは山ほどあり、取り除くと使えるサインが無くなってしまいます。
・ すべてを手話記号で伝えようとすると、堅苦しい文語調の手話伝達になるかもしれません。
手話を使える状況下では、表情なども見えますし、声も相手の耳が働けば届きます。
だから、完全な文章を組んで、すべてを手話に置き換えなくていいのです。
固有名詞は発音して声で、自由な身振りやものまねも取り込みながら、
手話でそれらをつなぎます。意味のシンボルとしての手話と、
その他のジェスチュアとは区別をつけて表情豊かに演じるといいでしょう。
・ ことば文化の違う相手に「全身」を使って何とか伝えようと互いに「努力」する間で、
交流の感動が呼び覚まされると想像します。そしてさまざまな立場の人々に使われる中から、
さらに使いやすい手話イディオムも開発されるかもしれません。
* アメリカの子どもたちに折り紙を教えたとき、「注目」「質問」「お願い」「内(折り)」「外(折り)」
などの地球語サインを憶えてもらってはじめたことがあります。ことばだけの説明よりも
ずっとスムーズに伝わって、盛り上がりました。ささやかな日常的サインから試用してみてください。
・ 地球語の手話が普及すれば、手話や身振り記号を動きに取り入れ、
メッセージを伝えて身体全体で詩を語る新しいダンスやパフォーマンスが楽しめます。
伝達の道具としてだけでなく、自己表現や内部世界との対話道具としても、手話は多くの可能性を秘めます。
地球語手話の具体案は、字典 をご覧ください。
左の下3つの記号は、上から順に
ボ、
フィー、
ワと読みます:
ボはバランス(コマが回りながらバランスを保つ形)、
フィーはずっと続く状態、
ワは丸いもの(ここでは地球を象徴)をイメージさせます。
上の記号 は、これらを同じ平面上で重ねた文字です。
1文字で、これら3つのイメージを合わせた「平和な地球」をイメージさせますが、
この文字を地球民の出合いと別れのあいさつ 、「拝啓」「こんにちは」「おはよう」「さよなら」など
どれにも使えるオールマイティーなあいさつ共通語として用います。
このように重ねて造った「重ね文字」は、音声の接着剤とする軽い「ナ」音を構成要素の
基本記号の呼び名の間に挟んで読みます。すると、「こんにちは」に当たる音声記号は、
「 ボナフィーナワ」です。
地球語手話を使う場合には、音声ではそれぞれのお国ことばで「こんばんは」「晩じまして」'Good
Evening'などと
いいながら、図のように片手でワを象り、他のボを象った手
でフィーの形に動かします。
* 出合いにほとんど何も言わずに用件に入る地域、相手の健康や安全や良き日を祈る意味の
軽い挨拶をする地域、日本のように「蒸しますね」「雨が来ますかな」「このところよく降りますね」などと
気候について同感し合う地域と、挨拶はいろいろです。
自分の習慣と違っていると、馬鹿にされたり、間抜けていると感じたりして、出会い頭から
交流がつまづきかねません。どの習慣も気候風土や歴史的な深い事情から育ってきたのに、
勝手に自分の尺度で判断することが間違いの元です。
互いのことばをそのまま尊重しながら、地球世界の調和への祈りを込めたこのあいさつを
共にするのはいかがでしょうか?
人々はあいさつのたびに持続する社会への思いを刺激されます。
基本記号の形がシンプルなので、手話と同様に身体を使って伝える方法はいくつも考えられます。
「身振り記号」: 手話の届かない水平方向の遠方へ「全身」で字母を象って伝えます。
棒などの補助具を使ってもいいでしょう。
「駆け足記号」: 上空に伝える手段として、大きな字母の線を走りまわって描きます。
「手のひら記号」: 相手の手のひらに字母を記します。
動けない人の最後の伝達手段
「目線文字」: 字母の形を空中になぞるように眼球をゆっくりと動かします。
視力・聴力・手足の運動能力などが突然失われる不測の事態には、誰もが失意のどん底に陥るでしょう。
そんな状態で伝達の道が閉ざされるのは、体が不自由な以上に苦しいにちがいありません。
地球語が普及した世では、どんな状況下でもこのような手段への応用で咄嗟の伝達が開けます。
工事現場や病院などでは、日常的にこれらの手段が有効ではないでしょうか?
これらのサインでは、重ね文字の同時表示は困難です。
それぞれ次のようなサインを加えると、複雑なメッセージでさえ伝えられます。
・ 音声・手話記号と同様のつなぎサインと空白サイン
・ 動きから伝達機能をはずすサイン
(大きな動きのサインでは、文字表示に無関係な動きが間に入る可能性があります。
目の動きの場合には、字母の線に不要な移動の間は目を閉じれば済みます)
・ 上空に伝える場合には、文字の上下方向も最初に知らせておくべきでしょう。